旅客機からの緊急脱出【上】
今日から3日連続投稿します『旅客機からの緊急脱出』3部作です。 お盆で飛行機に乗られる予定がある方はぜひ読んでください。そしてできれば多くの方にシェアしていただけないでしょうか。空の旅をもっと安全にしたいんです。みなさんのお力で。
飛行機に乗っているCA(Cabin Attendant/ 客室乗務員)の職務は何かご存知ですか?乗客に笑顔で飲み物を配るのが主な仕事だと勘違いされていませんか。実は飛行機に搭乗する時から降りるまで、ずっと皆さんを監視することが仕事なんです。そう言われると気分が悪いでしょう。気持ちの良いものではありませんよね。
言葉を変えます。CAは保安要員なんです。保安業務が第一業務なのです。
何かあった時には皆さんのお手伝いをするのが、メインのお仕事なんです。
緊急時にどうしたらいいかわかりませんよね。
誰かがお手伝いしないと。誰か飛行機のことをよく知っている人が。
あなたよりもずっとよく知っている人が。
1. 「絶対に安全」は存在しない
飛行機に乗って緊急事態に出会う確率はとてもとても低いものです。宝くじ1等に当選するよりはるかに低いのです。ほとんどの乗務員(CA・パイロット)が危険な目にあうことなくキャリアを終えます。それが理想ですし、そうあるべきです。しかし飛行機が飛ぶという限り、危険はつきものです。
A ship in harbor is safe, but that is not what ships are built for.
「船は港に停まってる時が一番安全。でも海に浮かべるために作られたのではない。」
なんて言葉があります。
「安全」の勉強をする時には必ず出てくる、と言っていいほど有名な格言。僕もアメリカの大学の授業で習いましたし、その後もちょこちょこいろんな文献やセミナーで目にする言葉です。
「絶対な安全」というものは存在しません。車の運転もそうです。絶対に事故にあわないようにするには、車に乗らないことしかありません。
空の世界で絶対な安全を守るためには、飛ばないことしかありません。飛ぶ限り危険はつきもの。危険な目に合わないように組織をあげて全力で安全運航を目指すしかないのです。一つ何かが起こっても 次にカバーするシステムがちゃんとあって、飛行機に搭載されているシステムも二重、三重に守られているのが標準です。それでも人間の作った機械は壊れますし、事故は起こります。
だからこそ人間が最後の砦になるのです。これだけ安全を目指しているのにも関わらず事故が起こってしまった場合、CAやパイロットが皆さんをできるだけ安全に脱出させようとしますし、そのために厳しい訓練を重ねています。
2. 監視とは
さて監視しているとはどういうことか。機内ではさまざまなことが起こります。バスや電車と同じです。いろんな人が乗ってきます。知らない人ばかりです。
一番の脅威はハイジャックも含め、機内での暴力・迷惑行為です。凶器となりえる危険な物の持ち込みはないか、不審者が乗ってきていないか。注意を要する人はクルー全員で情報が共有されます。サングラスをかけていて怪しいから、という見た目ではありません。毎日毎日 人を観察しているCA、目のつけどころは違います。目を合わせない、返事をしない、汗を大量にかいている、そわそわしている。そんな人が挙句の果てにコクピットのドアを開けようとしています、という報告がきて実際にその方の搭乗を拒否して降りてもらったことがあります。我々は安全を一番に優先し、機内の秩序を守ることが仕事です。その為には他の乗客を不安にさせてはいけません。
酔っ払いにも苦慮します。アルコール臭がしたら要注意です。暴れるかもしれないから?それもありますが。上空では気圧の変化もあってかなり高い確率で気分が悪くなります。揺れも重なって嘔吐し、トイレにこもる。たくさんの乗客がいる中、その人の面倒に時間をさくことになります。リゾート路線にはそういう乗客が多いイメージです。
体調悪そうな人がいないか。むしろ監視をする合間に皆さんにサービスを行っていると言ってもいいでしょう。
よく映画やドラマでドクターコールを目にします。
「お客様の中にお医者さまはいらっしゃいませんか」
あんなの本当はないでしょ?ところが結構あるんですよ。そして手を挙げる人が7人や8人もいたり。医者の学会出席者が多数乗り合わせていて、お医者さん同士でどうぞどうぞと。面白いでしょ?
処置が必要な場合に、医療関係者しか使えない救急キットも載っています。CAが気軽に使える救急箱はもちろんのこと、AEDもあります。機内にないといけない幼児用の救命胴衣の数も決まっているんです。消火器の数、酸素ボンベの数、全て法律で決まっています。一つでも足りないと出発が許されません。
CAは機内で、警察官になったり看護師になったり消防士になったりするのです。保母さんになる時すらあります。どうでしょう。そろそろCAを見る目が変わってきたでしょうか。
3. 健常者が考えないこと
飛行機には車いす使用の方も乗られます。何不自由なく生活がおくれている健常者はあまり普段考えないことかと思います。そういう方が乗っていることすら知らないのがほとんどかと思います。なぜかと言うと、車いすの方は一般搭乗が始まる前に援助を受けて先に搭乗し、皆さんが降りてから最後に降りられるからです。だからそういう方を目にすることがないのです。目の不自由な方もいます。付き添いの人がいない場合は(一緒に搭乗が認められている)盲導犬と一緒に乗られることもあります。
このような情報はCA間で共有されることはもちろん、必ずパイロットにも知らされます。とても大事なことだからです。緊急脱出する際に必ず手助けが必要だからです。そういう方々の人数と座席位置は乗務員全員が把握しています。
そしてこのような方々が座れない席があります。それは非常口座席です。
非常口座席の近くに座られる方には必ずCAがする質問があります。
「緊急時にはお手伝い頂けますか?」
状況によってどうなるかはわかりませんが、近くにいるので何かCAが援助をお願いするかもしれません。「そんな大役無理です」と言って拒否される方もいます。実際に断られて、全く違う座席に座っていた僕が代わりにその席に座ることになったこともあります。こちらは依頼しているだけです。責任が重いですものね。断っていただいても全く問題ありません。
パイロットやCA(整備士や内勤職員も)が次の勤務地へ向け移動するために客席に乗っていることが日常的にあります。その時の勤務状態によって制服でなく私服で乗っていることもありますが、その便を担当しているCAは乗客リストを見て常にその存在を把握しています。緊急時に手伝ってもらえそうな人の数を事前に見積もっているのです。従業員が1人も乗らない時は、搭乗案内の時から「こいつ使えそうだな」なんて一般のお客さんを見ていることもあります。すべて緊急事態に備えているのです。あなたに笑顔で接しながら。
(明日投稿の【中】へ続く)
目次
「絶対に安全」は存在しない
監視とは
健常者が考えないこと
「90秒ルール」
ジェット機とプロペラ機
パニックコントロール
ニュースバリュー
<安全のしおり>




Incredibly interesting - I can’t believe I’ve missed these articles! onto the second part now. Good to know these things!
Thank you for taking the time to read this! I'm sure this gives you a whole new perspective on airplane cabins next time you fly.